Punky Monch。今夜、盗みに入るはボサノバ通り西4丁目レイジー宝石店だ。ところで、ボサノバは不思議な音楽である。直談判さながらの正当(?)ジャズは、右耳の1から左耳へ0.5しか残せないが、ボサノバは熱心なファンではなくても、心地よく耳を流れていく。それは今回も証明されたように思う。知っていた曲は、最初の「ユー・アー・マイ・サンシャイン・オブ・マイ・ライフ」とアンコールの「トリスチ」のみであったが、気がつくと素朴で自然な時間に身を任せていたようなのである。何の持ち合わせがなくても、楽しめる音楽を改めて感じた。どこの世界でも、必要な時に必要な役者を欠くことはできない。ジャンルを便宜的な区分でしかないと捉えている関口。前回はカナダのトロンボニストのよき競演者として登場したが、今日は音楽的移民としてブラジルに発つ。リーダーの彼は、堅実な本間と長崎の渡航券も首尾よく手配していた。達人関口の気配りによって、富山は相部屋で寝泊りするかのような一体感あるヴォーカルを聴かせることに成功したのだ。
何といっても当夜の収穫は、富山には生まれながらにファンタジーが備わっていることを確信したことだ。この特別な神の恵みによって、彼女は、自身にも周囲にも幸福なサムシングを提供できているのだろう。盗んだ宝石はみんなで山分けだ。